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その家具と暮らす 荒川家具

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日本人と家具

2020/04/03

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私たち日本人はいつごろからダイニングテーブルや椅子、ソファを使うようになったのでしょうか。日本の家庭用の洋家具の歴史はそう長くはありません。日本の洋家具の始まりは、実は戦後の連合軍占領下から始まったと言えます。

進駐軍の家族住宅の建設に伴い、その中に置く家具、家電、日用品などがアメリカ軍指導のものと短期間で作られました。それまでの庶民の暮らしといえば、食事はちゃぶ台、その周りに座布団。タンス程度はあったと思いますが、椅子やテーブルは一部の人だけの家具でした。

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ジャパニーズ・モダン

そもそも日本の家には家具がほとんどありませんでした。正確に言うと家具は建築に組み込まれていました。
座るにはタタミの上、収納は押入れ、飾り棚は床の間、縁側に座るなど家具のない生活でした。終戦後を機に一気に日本の家具の洋風化が進んだと言えます。

それと同時に欧米のモダンデザインを踏まえながら日本のオリジナルデザインを生み出していこうという機運が高まっていきました。ジャパニーズ・モダンの確立です。
その時、中心となって活躍したデザイナーが剣持勇、豊口克平、柳宗理など、今も日本の名作家具として販売されている家具をデザインした人たちです。

欧米とは違い靴を脱いで生活する日本人、体型も小柄で欧米の椅子をそのまま持ってきても使いづらい、日本人の暮らしに合う椅子はどういうものか?
それでいて日本独自の美しいデザインとは何か?はやく欧米に追いついていこうという気概があったのでしょう。

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トヨさんの椅子

おもしろいエピソードが残っています。剣持勇や豊口克平らは、まだ日本に人間工学という概念がなかった時代に、宮城県の鳴子温泉に泊まり込み、外の積雪の中に座りお尻の曲面や角度を測って椅子づくりに活かしたという逸話が残されています。その後、豊口克平が発表した椅子が「トヨさんの椅子」です。その時の実験が生かされた、とても座り心地の良い椅子です。

高度経済成長を経てバブル期に入りたくさんの輸入家具が入ってきました。いつしか日本の名作家具は忘れ去られ、派手で豪華な装飾の輸入家具がもてはやされた時期もありました。しかしそれらは私たち日本人の暮らしに合った家具だったのでしょうか?

いま改めて日本人の暮らしに合った家具が求められていると感じます。本当に心地よい暮らしとは何かを考え、自分たちに合った家具選び、奇をてらうものはないけどシンプルで使いやすい家具。

じつはそれらは今から50~60年前のいわゆるミッドセンチュリー期に作られていました。名作家具に触れることで、改めて我々の暮らしを心地よくできるのではないでしょうか。

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